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『Tokyo Dream』
LiLy
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Art by
DONA
Picture by Chizuru Abe
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Introduction (本文より)
大きな夢をみることを時代に許されながら、私は育った。
信じ続けていれば夢は必ずかなうものだと、皆が言った。
1981年生まれの私は、バブルを生きる大人たちの背中に自分たちの
キラキラとした未来を透かし見ながら、小学生時代を過ごした。中学
1年の時に大ヒットしたアムロちゃんの『Chase the Chance』を聴いて、
いつの日か私も大きな夢を追おうと決意し、高校時代に身につけた
“目立ってナンボ”なギャル精神から、“将来の自分”という題の
妄想を更に派手に味付けしていった。
2001年。遂に20歳! 今まで温めすぎて、はち切れんばかりに
膨らんだ野望を胸いっぱいに、いざ、憧れの街、東京へ! すると、
あれ……? 世の中は不景気、真っ最中。子供だった私に、「夢は
大きく! 」と微笑んでくれていた大人たちは急に手の平を返した
ように、「現実を見ろ! 」と眉をしかめた。
大きくなりすぎてその輪郭さえハッキリしない巨大な夢と、
大人になったことで目にくっきりと映り始める過酷な現実。
そのはざまで、どんなにもがいていても、たとえ溺れ死にそうに
なっていたとしても、東京プライスの家賃だけは毎月しっかり
やってくる、TOKYO DREAM LIFE。ひとり、またひとり、と地元へ
帰ってゆく友達を見るたびに、東京にしがみつこうとする私の両手に
力が入った。銀行の残高が0になった時が、私がここを去る日となる。
そう思うと怖くて、私はバイトを3つ掛けもちしてガムシャラに働いた。
意地でもしがみついてやる。だって、私は信じている。
この街には、私が探しているチャンスが必ず転がっているはずなんだ。
住み続けるだけでも精一杯な東京での日々は、猛スピードで過ぎてゆく。
一向にカタチにならない夢に、焦れば焦るほど、自分がこの街で
何を探しているのかさえ見失いそうになった。何もかもがあっという間に
移り変わるこの時代に、この街に、置いてきぼりを食らわないようにと
走れば走るほど、息が切れて、苦しくて、涙がでて、
どうしようもないほどの孤独を感じた。
大きな夢をみればみるほど現実に裏切られ続けるのは何故。
信じ続けていれば夢は必ずかなうなんて、嘘ついたのは誰。
ビルとビルのあいだの小さな空を突き破る“高い理想”から、
路地裏のコンクリートに位置する“現実”まで一気に突き落とされて、
知らぬ間に高くなっていた鼻を何度もへし折られた。そのたびに、
あまりの悔しさに、惨めさに、耐えられなくて震えた。自分に夢が
あることすら恨めく思った。夢さえなければ、こんな辛い思いをせずに
済んだのに…。何かで成功したいという野望さえなければ、平凡な日々を
今よりずっと幸せな気持ちで過ごせていたかもしれないのに…。
そう思って泣いた夜は数え切れないけれど、それでも私はやっぱり、
夢をみることをやめられなかった。絶対に諦められなかった。
自分の将来に大きな夢をみた、子供のころの自分の期待を
裏切りたくなかった。昔の自分が今の自分へと課したノルマからは、
どうやったって逃げられるものではなかったのだ。
夢がある以上、それをかなえる以外に幸せになる術はない。だから私は、
夢をあきらめない代わりに、いらないプライドをすべて捨てた。過去の
自分が未来の自分に望んだ幸せは、今の自分が、掴むしかない。子供の
頃、目をつぶりながら、小さな胸いっぱいに膨らましていた夢は、
大人になった自分が、目をカッと大きく見開きながら、
ひとつずつ現実に変えてやる。
夢は、リアリストにしかかなえることができないもの。
私は、夢見る現実主義者となり、東京で、旅を続けた。
2008年。ラジオDJを目指して、茨城から上京して7年。
もうすぐ27歳になる私は今、東京で、作家としてコラムや小説を書いて
暮らしている。この本は、私の7冊目の著書として、今、どうしても書き
たかった物語。ずっと書き続けていた日記をもとに、私自身の、19 歳
から今日までの夢の軌跡を追ったノンフィクション。
DJとして初めてJ-WAVEのマイクの前に座ることができた、あの春。
ライターとして雑誌に初めて記事を書いた、あの夏。企画が採用されて
初めてのコラム連載を持つことができた、あの秋。1冊目の著書を出版
できた、あの冬。自分を作家と自称していいと思える小説を、やっと
書き上げた、あの年末…。
すべての経緯を、感情を、生々しく鮮明に覚えている今、届けたかった。
本という箱の中に閉じ込めたエネルギーを、同じ時代を生きる、
旅仲間たちへ。
ニューヨークを2位におさえ、世界一の人口を誇る大都市、東京。
その中で、自分の夢を探し、見つけた夢をかなえるまでの、物語。
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幻冬舎より、10月25日に発売決定。